• 1. 書誌情報の作成
• 2. 書誌ユーティリティの機能
• 3. 書誌ユーティリティと図書館目録
• 4. OPAC
• 5. MARC
• 6. JAPAN/MARC

1. 書誌情報の作成

1-1. 書誌情報と目録規則

• 目録規則の目的は、情報資源を的確に検索・入手できるようにすることにある。
• 一方、コンピュータ目録の実用化によって、図書館における資料検索は大きく変化してきた。
• 書誌コントロールの視点からは、目録規則の内容が、「各館個別の目録」に加え、複数の図書館を対象とした「総合目録」にも適したものであることが望ましいと考えられる。
• 日本の場合は、1980年代に大学図書館を対象とした総合目録システムを構築する事業が開始されたことから、そのシステムで運用することを一つの大きな目的として日本目録規則の改訂が行われた。

1-2. 書誌情報と分類法

• 図書館における分類とは、情報資源を、ある一定の基準によってグループ化することである。
• 書誌コントロールの視点では、資料に適切な分類が付与されていることで、内容的に関連する資料を、より利用しやすくなることが期待される。
• 適切な分類を付与するためには、分類法自体の見直しや、分類作業を効率的に進めるための工夫も必要である。
• たとえば日本の代表的な分類法である「日本十進分類法 新訂 10 版」では、論理的不整合の修正や、用語の整備を行い、利用者にも分かりやすい分類表をめざしている。
• 世界の主要な分類法の例としては、下記のようなものがある。

  NDC（日本十進分類法）

  NDLC（国立国会図書館分類表）

  DDC（デューイ十進分類法）

  LCC（アメリカ議会図書館分類表）

1-3. 資料種別と目録検索の課題

• 資料種別とは、たとえば、「図書」「雑誌記事」「新聞記事」「レコード」「ビデオテープ」「ネットワーク情報資源」などのように、形態的に異なるもののことである。
• 利用者の立場から見ると、資料種別には限定されずに、あらゆる資料を対象として検索や入手ができることが望ましい。
• 従来は、資料種別ごとに調べる手段が異なっているために不便を感じることも多かった。
• より利用しやすい環境を目標として、目録や分類の整備や改良が進められている。

2. 書誌ユーティリティの機能

2-1. 書誌ユーティリティとは何か

• 「bibliographic utility」という用語は、1970年代末ころから使われ始めたといわれている。
• 主な事業内容としては、下記のようなものがある。

  (1) 書誌情報の供給

  (2) オンライン分担目録作成システム

  (3) オンラインデータベースサービス

  (4) 総合目録の編集と形成

  (5) オンラインによる図書館協力システムの運営

  (6) コンピュータを相互につなぐネットワークの構築と維持

2-2. 代表的な書誌ユーティリティ

(1) 国立情報学研究所 (NII)

• 1984年12月から、日本国内の大学図書館を対象に目録所在情報サービス（NACSIS-CAT）を提供している。
  • https://contents.nii.ac.jp/catill
• [参考] NACSIS-CAT 参加機関数
  • 出典: https://contents.nii.ac.jp/catill/stats/cat/transition/kikan_bookh

(2) OCLC

• 1967年発足の Ohio College Library Center を母体とするオンライン共同利用ネットワークセンター。
  • https://www.oclc.org/
• [参考] OCLC at a glance
  • 出典: https://www.oclc.org/en/about.html

(3) RLG (Research Libraries Group)

• 1974年発足。1978年から、目録サービス RLIN (Research Libraries Information Network) を開始。
• 2006年にOCLCと統合。

(4) WLN (Western Library Network)

• 1976年に、ワシントン州内図書館の共同機械化システムとして活動開始。
• 1999年にOCLCと合併。

2-3. 書誌ユーティリティと個別の図書館

• 個別の図書館の活動に及ぼす影響としては、下記のようなものがある。

  (1) 書誌データを、複数の図書館で共有して利用可能。

  (2) 標準化された高い品質のデータ。

  (3) 総合目録形成に大きな役割。

  (4) 文献・資料の貸借や複写業務が、一つのシステムで処理可能。

  (5) 情報検索サービスの強化。

  (6) レファレンス質問・回答のデータベース化による業務支援。

  (7) 職員研修や利用者教育の機会。

  (8) 技術開発の成果の利用。

3. 書誌ユーティリティと図書館目録

3-1. 書誌ユーティリティとデータ作成者

• 書誌ユーティリティを利用してデータを作成する際に、誰がデータを作成するかということが問題となることがある。
• データの品質を高めるためには、ある一定の知識や技術を身につけた人が担当することが望ましい。
• しかし、基準を満たす人が少ない場合は、データ作成に時間がかかってしまう可能性がある。
• 一方、誰でも作成することができるようにした場合は、データの品質が低下する可能性がある。
• NACSIS-CAT では、この問題を重視し、システムの運用開始前に、以下の2つの案が検討された。
  1. 優秀な人材を厳選し、特に認定された人だけがデータを作成することができる。
  2. 一定の研修を終了すれば、誰でもデータを作成することができる。
• 上記の案 1. は、理想ではあるが、やはり、作成にかかる時間が問題となった。
• 最終的に案 2. が採用されたが、データの品質低下を防ぐため、対応を検討していくこととなった。

3-2. コンピュータによる目録作成：流用入力とオリジナル入力

• 書誌ユーティリティを利用することにより、外部機関の作成した目録データを利用することが容易になった。
• コンピュータを利用した目録作業は、大きく分けて、流用入力とオリジナル入力の2種類がある。

(1) 流用入力

• コピーカタロギングとも呼ばれる。
• 作成済みデータ（JAPAN/MARC や民間MARC など）をもとにするので、省力化できる。
• 必要に応じて、各館の登録番号、所在記号、独自の分類記号、独自の書誌情報などを付加することもできる。
• 高品質のデータを利用できる環境と、データを適切に評価できる作業者が必要。

(2) オリジナル入力

• オリジナルカタロギングとも呼ばれる。
• 既存の書誌データが入手できない場合に必要。
• データの品質を維持するためには、作業者に高度な能力が求められる。

3-3. コンピュータによる総合目録：集中型と分散型

• コンピュータの導入により、総合目録の作成・提供も容易になった
• ネットワーク経由で提供されている総合目録は、大きく分けて、集中型と分散型の2種類がある。

(1) 集中型

• 中心となる機関にシステムを構築し、提供するもの。
• 一定の規則によるデータを、単一のシステムで利用できる。
• あるシステムで作成されたデータが、異なる検索システムに収録、提供される場合もある。
• 集中型の事例
  • 国立国会図書館「国立国会図書館総合目録ネットワーク（ゆにかねっと）」
    • https://ndlsearch.ndl.go.jp/somoku/
    • 全国の都道府県立図書館や政令指定都市立図書館等のデータを収録。
    • 「国立国会図書館サーチ」で検索することができる。
    • https://ndlsearch.ndl.go.jp/
  • 国立情報学研究所「目録所在情報サービス（NACSIS-CAT/ILL）」
    • https://contents.nii.ac.jp/catill
    • 全国の大学図書館や研究機関等のデータを収録。
    • 「CiNii Books」で検索することができる。
    • https://ci.nii.ac.jp/books/
    • また、メタデータの連携により、「国立国会図書館サーチ」でも検索することができる。
    • https://ndlsearch.ndl.go.jp/
  • 山梨県立図書館「山梨県図書館情報ネットワークシステム」
    • https://www.lib.pref.yamanashi.jp/magazine/kennet/index.html
    • 山梨県内の公共図書館、公民館図書室、県内機関等のデータを収録。
    • 下記は、検索画面へのリンク。
    • http://soumoku.lib.pref.yamanashi.jp/servlet/jlibnet.servlet.StatefulServlet?serviceKind=netnn

(2) 分散型

• 個別の図書館の OPAC を横断的に検索するシステムとして提供されるもの。
• 日本の公共図書館では、都道府県単位で、都道府県立図書館のシステムによって提供される場合が多い。
• 図書館ではなく、民間団体が開発・提供する横断検索サービスもある。
• 分散型の事例
  • 都道府県別横断検索システムへのリンク
    • ucat2024.html
• 民間団体が開発・提供する事例
  • 株式会社カーリル「カーリルローカル」
    • https://calil.jp/local/

4. OPAC

4-1. OPAC とは何か

• Online Public Access Catalog の略称。（「オンライン利用者用目録」や「オンライン閲覧目録」と訳される。）
• 所蔵資料の書誌情報をデータベース化し、蓄積、出力するシステムの総称。

4-2. OPAC 形成の背景

• 目録の検索機能の強化を進める過程で発展。コンピュータ技術の適用がOPAC 形成へつながる。

4-3. OPAC の歴史

• 初期には、コンピュータによる処理が可能な範囲は狭かった。
• コンピュータの性能が向上するにつれて、利用範囲が拡大されていった。

  データはコンピュータで処理するが、そのデータをカードやリストに印刷して提供。

  ↓

  自館で作成した目録情報を、館内の機器によって利用者に提供。

  ↓

  複数の図書館を結んだネットワークの整備。他館へのアクセス。商用データベースの利用も。

  ↓

  システムのシームレス化。ネットワーク空間に存在する情報資源の検索・入手が可能に。

4-4. 検索機能の変化

• 第1段階
  • 目録カードの機械化というイメージ。
  • 検索方式は完全一致のみ。
• 第2段階
  • 検索機能の増加。（キーワード検索、ブール演算、索引語のブラウジング、など）
  • 新しいサービスの付加（貸出中情報の提供、所蔵していない資料の検索への対応、など）
• 第3段階
  • 自然語での検索をシステム側で変換して検索。
  • 入力された語の誤りやあいまいさを指摘し、より適切なものへガイドする機能。
  • 利用者が気付かないところでのシームレスな検索と、結果の提示。

4-5. OPAC のこれから

• より高度な検索機能。
• より使いやすいシステム。
• 各館ごとのOPACから、Web全体の総合目録へ。
• 利用者のプライバシー保護。

5. MARC

5-1. 「MARC」 とは

• 当初は、コンピュータを利用した目録作業全体の総称として用いられた。

  MAchine Readable Cataloging（直訳すると、機械可読目録作業）

• その後、コンピュータを利用して作成された書誌情報や、それをもとにした目録データそのものの意味でも用いられるようになった。

  MAchine Readable Catalog（直訳すると、機械可読目録）

• 現在は、後者の「MAchine Readable Catalog」の意味で用いられることが多い。

5-2. 「MARC フォーマット」 とは

• コンピュータを利用した目録システムにおいてデータをどのように記録するかを規定したものである。
• 図書館のコンピュータシステムの内部構造は、メーカーや機種によって異なることが多い。
• しかし、一定のフォーマットに対応したシステムを組んでおくことにより、そのフォーマットを仲介として、相互にデータを利用することが容易になる。
• 例えれば、個別のシステムで話されている「方言」を、MARCフォーマットという「共通語」で相互理解するようなものである。
• MARCフォーマットには、いくつかの種類がある。
• 日本の代表的なMARC として、国立国会図書館のJAPAN/MARC がある。
• 【参考】国立国会図書館Web サイト「書誌データの作成および提供」
  • https://www.ndl.go.jp/jp/data/index.html
• JAPAN/MARC の現時点の最新版は、下記の2種類である。

  JAPAN/MARC MARC21 フォーマットマニュアル単行・逐次刊行資料編（2021年1月版）

  JAPAN/MARC MARC21 フォーマットマニュアル典拠編（2021年1月版）

5-3. MARC フォーマットの構成要素

• ある資料を表す個別のデータは、「レコード」と呼ばれる。
• 1つの「レコード」は、大きく分けて、以下の3要素からなる。

  レコードラベル

  ディレクトリ

  データフィールド

• 実際のデータは、「データフィールド」部分に格納されている。
• 「ディレクトリ」は、「データフィールド」に、データがどのように格納されているかを示す。
• 「レコードラベル」には、その「レコード」がどのようなものかを示す情報が格納されている。

具体的な内容とデータの例（→別紙参照）

• 以下は、JAPAN/MARC の構成要素である。
  • 出典: JAPAN/MARC MARC21 フォーマットマニュアル単行・逐次刊行資料編. 2021年1月版.

• 以下は、山口晃『すゞしろ日記』の JAPAN/MARC データである。

• 上記のデータの「レコードラベル」、「ディレクトリ」、「データフィールド」を、以下に示す。

  ▼レコードラベル

  ▼ディレクトリ

  ▼データフィールド

• 以下は、「ディレクトリ」と「データフィールド」の対応の例である。

• 上記の「ディレクトリ」のデータ「245004900234」は、以下を表している。

  フィールド識別子 (タグ)	245
  フィールド長	0049 バイト
  フィールドの先頭位置	00234 バイト

• 上記の「データフィールド」のデータ「00$6880-01$aすゞしろ日記 /$c山口晃 画.￥」は、以下を表している。

  第1インディケータ (1XXへの記録有無)	0
  第2インディケータ (排列無視文字数)	0
  サブフィールド $6 (読みの対応関係)	880-01
  サブフィールド $a (本タイトル)	すゞしろ日記 /
  サブフィールド $c (本タイトルに関係する責任表示)	山口晃 画.
  フィールド区分文字	￥

6. JAPAN/MARC

6-1. 国立国会図書館における業務のコンピュータ化

• 書誌編纂の機械化のあゆみ

  (1) 1961年から海外の先進事例調査開始。

  (2) 1965年から国立国会図書館所蔵資料の編纂実験開始。

  (3) 1970～1971年に漢字入出力機能のあるコンピュータ導入で本格稼働。（通称「和図書システム」）

  (4) 1978年からコンピュータ編集による「日本全国書誌」刊行。

6-2. 全国書誌としてのJAPAN/MARC

• 汎用性の高いものとするため、「和図書システム」を全面的に見直した。
• 変更点の例：漢字コードの変換、タグ・識別子の調整、固有の事務用データの削除、など。

6-3. JAPAN/MARC の利用

• メリット：目録作業の省力化。データの高品質化。共同目録作業の実現。総合目録の形成。など
• 図書館業務の改善例

  (1) 資料選択のためのリスト作成

  (2) 正確な受入予定情報

  (3) 迅速な新着資料情報の作成

  (4) 高品質の目録情報の入手・提供

  (5) 所蔵目録編成作業の効率化

  (6) 多様な検索手段の提供

  (7) 他館との所蔵情報の交換

6-4. 民間MARC

• JAPAN/MARC はデータの提供が遅いという指摘がある。（国会図書館が収集してから作成するため）
• 一方、民間MARC は、販売をサポートする目的で作成され、次のような利点がある。

  (1) 情報の早さ

  (2) 図書の「帯」に記述された「売り文句」からのデータ入力

  (3) 利用対象に関する情報（児童向き、一般向き、研究者向き、など）

• 民間MARC のうち、図書館流通センターが提供する「TRC MARC」は、公立図書館で採用される機会が多い。
  • https://www.trc.co.jp/solution/marc.html

参考資料とリンク

JAPAN/MARC MARC21フォーマットマニュアル

• 単行・逐次刊行資料編（2021年1月版）
  • JAPANMARC_MARC21manual_MS_202101.pdf
• [参考] 単行・逐次刊行資料編 オリジナルへのリンク
  • https://www.ndl.go.jp/jp/data/JAPANMARC_MARC21manual_MS_202101.pdf
• 典拠編（2021年1月版）
  • JAPANMARC_MARC21manual_A_202101.pdf
• [参考] 典拠編 オリジナルへのリンク
  • https://www.ndl.go.jp/jp/data/JAPANMARC_MARC21manual_A_202101.pdf

JAPAN/MARC データの例

• 山口晃『すゞしろ日記』の目録データとMARCデータ [PDF]
  • libcats05a.pdf
• 山口晃『すゞしろ日記』のMARCデータ例 [TEXT]
  • libcats05b.txt
• 山口晃『すゞしろ日記』の「ディレクトリ」と「データフィールド」の対応 [PNG]
  • libcats05c.png
• [参考] 国立国会図書館オンラインの書誌詳細画面へのリンク
  ＊データの修正があったため、現在のデータは、上記のサンプルとは一致しない部分がある。
  • https://id.ndl.go.jp/bib/000010495512

OCLC による MARC の解説

• [参考リンク] OCLCTraining - MARC Bibliographic basics
  • https://youtu.be/Wa1Y21Q2-sI
• [参考リンク] OCLC Support & Training - Bibliographic Formats and Standards
  • https://www.oclc.org/bibformats/en.html

授業資料

• 第5回 配付資料 [PDF]
  • 202305a.pdf