図書館情報技術論

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1. 授業について
2. 授業内容の補足説明
3. 関連文献紹介
4. 現代の図書館と情報技術
5. 資料の劣化について
6. 資料保存と再生機器について

1. 授業について

1.1 履修上の注意事項

定期試験期間中の試験は行なわない。
最終回の授業時間内に、評価に関する小テストを実施する。
最終回の授業を欠席した学生には小テストに代わる課題を出すので、該当者は申し出ること。
最終回の授業を欠席し申し出もしない学生は、原則として履修放棄とみなす。
授業に関連する情報は、ネットには絶対に書き込まないこと。

1.2 「図書館情報技術論」のねらいと内容

文部科学省の解説資料では、以下のように述べられている。

図書館業務に必要な基礎的な情報技術を修得するために、コンピュータ等の基礎、図書館業務システム、データベース、検索エンジン、電子資料、コンピュータシステム等について解説し、必要に応じて演習を行う。

１）コンピュータとネットワークの基礎
２）情報技術と社会
３）図書館における情報技術活用の現状
４）図書館業務システムの仕組み（ホームページによる情報の発信を含む）
５）データベースの仕組み
６）検索エンジンの仕組み
７）電子資料の管理技術
８）コンピュータシステムの管理（ネットワークセキュリティ、ソフトウエア及びデータ管理を含む）
９）デジタルアーカイブ
10) 最新の情報技術と図書館
- 出典: 文部科学省生涯学習政策局「図書館法施行規則の一部を改正する省令及び博物館法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)」(平成21年4月30日) 別添2「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目一覧」p. 1.
- 参考リンク: 出典 (オリジナル) [202 KB]
  - https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/05/13/1266312_8.pdf (accessed 2021-03-31)

2. 授業内容の補足説明

2.1 この授業で扱うプログラミング言語について

コンピュータのソフトウェアとはどういうものかを理解する手助けとして、簡単なプログラミングを体験してみる。
プログラミング言語は、 Python を使用する。
ただし、Python 単独ではなく、「Anaconda」というソフトウェアに組み込まれている「Jupyter Notebook」を使用する。
なお、ここで扱うプログラミングはごく初歩的なものであり、あまり実用的ではないことに注意。
以下は、「Jupyter Notebook の簡単な使い方解説」へのリンク。
- jnnotice.html
以下は、今回の授業の配付プリント。
- jnnotice.pdf
より詳しい内容については、関連するWebを参照することを推奨する。
- Python Japan
  - https://www.python.jp/ (accessed 2021-03-31)
- 喜多一, 森村吉貴, 岡本雅子. プログラミング演習 Python 2021. 2021-10-08. [京都大学学術情報リポジトリ]
  - http://hdl.handle.net/2433/265459 (accessed 2022-03-30)
- Anaconda
  - https://www.anaconda.com/ (accessed 2021-03-31)

2.2 「Jupyter Notebook」のサンプルファイルについて

以下は、今回の授業で配付するサンプルファイル。
ただし、授業の際は、これらのファイルを先生用パソコンからファイル転送するので、以下のリンクは使用しない。
欠席した場合や、授業終了後の復習などの場合に、適当な場所へダウンロードして使用すること。

2.3 パソコンのキーボード入力について

キーボード入力の際の「Shift」と「Caps Lock」の違いについて解説する。
- key.html

3. 関連文献紹介

3.1 テキスト類

ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望 2 図書館情報技術論学文社 2012
講座・図書館情報学 4 図書館情報技術論ミネルヴァ書房第2版 2022
現代図書館情報学シリーズ 3 図書館情報技術論樹村房 2014
ライブラリー図書館情報学 3 図書館情報技術論学文社第3版 2022
図書館情報技術論田中均著青弓社 2019

3.2 アーカイブズ関連資料

図書館・アーカイブズとは何か藤原書店 2008
資料保存のための代替日本図書館協会 2010
アーカイブズが社会を変える松岡資明著平凡社 2011
デジタル・アーカイブとは何か理論と実践勉誠出版 2015
入門デジタルアーカイブまなぶ・つくる・つかう勉誠出版 2017
デジタルアーキビスト入門デジタルアーカイブの基礎新版樹村房 2019
デジタルアーカイブ・ベーシックス 2 災害記録を未来に活かす勉誠出版 2019

3.3 プログラミングとWeb関連資料

JLA図書館実践シリーズ 22 図書館員のためのプログラミング講座日本図書館協会 2013
図書館業務に役立つHTML・PHP入門星野雅英著樹村房 2018
考え方から学ぶプログラミング講義森畑明昌著東京大学出版会 2021

4. 現代の図書館と情報技術

4.1 図書館業務と情報技術

現代の図書館では、さまざまな業務に情報技術が導入されている。
代表的なものとしては、たとえば下記のようなものを挙げることができる。
- 貸出業務: 貸出処理の効率化
- 目録業務: 目録データ作成の効率化、オンライン目録の提供
- 資料のデジタル化: 資料保存のための媒体変換、オンラインでの提供
- ウェブによる情報提供: 利用案内、目録検索、レファレンス

図書館業務に従事する職員は、情報技術の基礎的な知識を身につけていることが期待されている。
図書館業務で必要とされる知識は、大きく分けて下記の2種類に区分することができる。
- 一般的な知識: コンピュータの基礎、データベース、ネットワーク、など
- 図書館業務用の知識: 貸出システム、コンピュータ目録、デジタルアーカイブ、など

4.2 図書館とデジタル資料

図書館が扱うデジタル資料は、大きく分けて下記の2種類に区分することができる。
- 非デジタル資料を図書館がデジタル化したもの
- 最初からデジタル資料として公開されたもの

非デジタル資料を図書館がデジタル化するメリットとしては、下記のような点を挙げることができる。
- 原資料は劣化や破損など、さまざまな理由によって利用できなくなる場合があるが、デジタル化によって、利用できなくなる前に、その時点の状態を記録しておくことができる。
- デジタル化した資料を利用することにより、原資料の劣化を防ぐことが期待される。
- ネットワーク経由でも提供可能となり、従来より広範囲の利用が期待される。

4.3 図書館とデジタルアーカイブ

現代の図書館では、デジタル資料を系統的に収集し、提供することが多くなってきている。
このような資料を呼ぶ用語には、まだ定着しているものがないが、たとえば、デジタルアーカイブ、デジタルコレクション、デジタルライブラリー、デジタルコンテンツ、デジタル化資料、などと呼ばれている。
大学図書館や研究機関の図書館では、同様のシステムが機関リポジトリと呼ばれていることがある。
デジタルアーカイブと機関リポジトリは、収録内容は似ている点が多いが、本来の目的という点では、以下のような違いがあるといわれている。
- デジタルアーカイブの主要目的
  - 過去の資料を正確に保存し、いつでも再現できる状態に保つこと。
- 機関リポジトリの主要目的
  - 過去の資料だけではなく、新たに生み出される資料も含めて、現在最新の情報を提供すること。
したがって、デジタルアーカイブと機関リポジトリの両方を提供している大学や機関もある。
この授業では、主にデジタルアーカイブ (複数形ではデジタルアーカイブズ) という用語を使用する。

日本において、いわゆるデジタルアーカイブを提供している図書館としては、国立国会図書館と、都道府県立図書館を挙げることができる。
都道府県立図書館では、名称や内容はそれぞれ異なるが、2021年7月現在で44都道府県の図書館が提供している。
都道府県立図書館の具体的な事例については、下記のリンク用ページ参照。なお、これと同じページを授業資料トップページの下部にも置いてある。
- 都道府県立図書館のデジタルアーカイブズ (2022年7月現在)
このリンクは、現在はリニューアル等によってリンク切れとなっている場合もあるが、そのような変遷を知ることができるという点も重要であるため、ここではあえて過去のリストを提供している。
以下にサンプルとして、国立国会図書館と北海道立図書館の例を挙げる。なお、どちらも「デジタルアーカイブ」という名称は使用していないことにも注意。

国立国会図書館デジタルコレクション
- 出典: 国立国会図書館デジタルコレクション
  - https://dl.ndl.go.jp/ (accessed 2021-03-31)
北海道立図書館北方資料デジタル・ライブラリー
- 出典: 北海道立図書館北方資料デジタル・ライブラリー
  - https://www3.library.pref.hokkaido.jp/digitallibrary/ (accessed 2022-03-30)

5. 資料の劣化について

図書館の所蔵する非デジタル資料のデジタル化は、劣化対策としても有効である。ここでは資料の劣化について、簡単に触れる。

5.1 資料の劣化とは？

「メディア」（媒体）の物理的性質が、作成直後の状態から大きく変化し、品質が低下すること。

5.2 具体的には？

紙の場合
- 汚損、破損、虫損（虫食い）、変色、変形、変質、など

レコードの場合
- 盤の破損や変形（ゆがみ）、音溝の傷や摩耗、など

磁気テープの場合
- テープの破損や変形（よじれ）、磁気の消去、など

5.3 劣化の例

虫損 (虫食い) の例: 訓蒙窮理圖觧福沢諭吉著 (1871)

表紙がちぎれて本体と分離した例: 別冊週刊読売日本の心川端康成 (1972)

落下の衝撃による破損の例: SPレコードバッハ作曲オルガン曲集 (1950頃)

5.4 劣化対策としての代替技術

代替技術とは、ある資料を別のメディアで再現し、もとの資料の代わりとして使用できるようにするための技術である。
もとの資料が劣化した場合でも代替のメディアによって補うことが可能であるため、代替技術は資料の劣化対策の1つと考えることができる。
代替技術にはさまざまなものがあるが、代表的な例としては、マイクロ写真技術とデジタル化技術の2つを挙げることができる。
マイクロ写真技術は1930年代に実用化され、多くの図書館で実績があるが、最近ではフィルムや機器が製造中止となってきており、将来性に不安がある。
デジタル化技術は1980年代に実用化され、現在は広く使われており、マイクロ写真をデジタル化するケースも多い。

[参考] マイクロフィルムとマイクロフィッシュ

デジタル化技術が実用化される以前に、代替手段として最も信頼されていたのがマイクロ化であった。
その代表的な種類として、リール形態のマイクロフィルムと、シート形態のマイクロフィッシュがある。

マイクロフィルムの例: 江藤新平関係文書北泉社 (1989)

マイクロフィッシュの例: Documents on British policy overseas, ser. 1, v. 1. (1984)

6. 資料保存と再生機器について

6.1 再生機器が必要な資料のデジタル化

再生機器が必要な資料を保存する場合には、資料だけではなく、再生機器も動作可能な状態で保存されていなければならない。
しかし再生機器は、製造中止やアフターサービス終了などによって、使用できなくなる可能性がある。

再生機器が必要な資料の保存に関しては、下記の点が重要であると考えられる。
- 再生機器が常に使用可能な状態にあるように注意し、必要に応じてメンテナンスを行なう。
- 再生機器が使用できなくなった場合でも、別の方法で再生できるように準備しておく。
- 再生機器が使用できなくなる前に、正常に再生された音声や映像をデジタル化しておく。

古いメディアが利用困難になりつつある現在、デジタル化に関連する技術の進展は非常にタイミングがよかったともいえる。
現時点ではデジタル化の技術にまだ問題点もあるが、現在の技術で可能な範囲で最善をつくし、未来へ継承することが求められている。

6.2 製造中止やアフターサービス終了の事例

ベータマックスVTR
- 出典: ソニーベータマックスVTRをご愛用のお客様へソニー株式会社 2002年8月27日
  - https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/ServiceArea/Betamax/index.html (accessed 2021-03-31)

レーザーディスクプレーヤー
- 出典: レーザーディスクプレーヤー生産終了のお知らせパイオニア株式会社 2009年1月14日
  - https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/index/422 (accessed 2021-03-31)

16mm映写機、OHP、スライドプロジェクター
- 出典: 16mm映写機、OHP、スライドプロジェクター、アフターサービス終了のご案内映機工業株式会社 2010.04.06
  - http://www.eiki.jp/topics/topics_04_2010_01/index.html (accessed 2021-03-31)

テープレコーダー
- 出典: OTARI 社 MX-5050 シリーズ生産終了のお知らせオタリテック株式会社 2011-06-13
  - http://www.otaritec.co.jp/news/otari/mx5050_discon/index.html (accessed 2021-03-31)
- [参考リンク]: 製造終了製品 MX-5050BIII２チャンネル・アナログ・オーディオ・テープ・レコーダーオタリ株式会社
  - https://www.otari.co.jp/support/vintage/mx5050/index.html (accessed 2023-03-31)

HD DVDレコーダー、HD DVDプレーヤー
- 出典: ＨＤＤＶＤレコーダー及びＨＤＤＶＤプレーヤーの修理受付終了について東芝ライフスタイル株式会社 2016年02月29日
  - https://www.toshiba.co.jp/regza/bd_dvd/news/20160229.html (accessed 2021-03-31)