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図書館情報技術論
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図書館における情報技術活用の現状
1. 図書館と情報技術
1.1 情報拠点としての図書館
- 情報拠点であるためには何が必要か?
- 利用者のニーズを満たすあらゆる「情報」を提供する必要がある。
- 紙媒体だけでなく電子媒体も必要 → 大量の情報を収集・管理・提供する必要 → 情報技術の必要
1.2 文化資産の継承(長期保存)者としての図書館
- 公共図書館にはどのような役割が期待されるか?
- 地域の文化や歴史の継承。
- そのためには、資料を長期間にわたって保存・提供する必要がある。
- デジタルアーカイブの特徴
- 保存、検索、提供の機能がすぐれており、文化の継承という面において大きな役割を果たすことが期待される。
1.3 電子図書館の出現
- 電子図書館は「図書館の存在意義にかかわる」といわれるがそれはなぜか?
- 図書館そのものがコンピュータとネットワークに置き換わってしまう。
- 電子書籍や電子ジャーナルの提供により、全文検索やデータの加工も可能に。
- 映像や音声など、文字以外にもさまざまな情報を扱うことができる。
- 図書館に行かなくても、ネットワーク経由で利用可能。
2. 図書館で情報技術を活用する目的
2.1 情報/データの管理
2.2 利用者サービスの向上
- 利用者サービスのうち、情報技術の活用が期待できるものはどのようなものがあるか?
- 貸出の迅速化により、利用者の待ち時間の短縮へ。
- 読みたい本を検索する機能。
- 本以外のさまざまな情報収集。
- インターネット端末や無線LANの提供などによるネットワーク情報資源へのアクセス。
- 障がい者や高齢者など、来館できない人へのサービス。
2.3 スタッフの業務の効率化
- 図書館の業務のうち、利用者サービス以外にはどのようなものがあるか?
- 資料の登録、除籍、督促、蔵書点検などの業務の効率化にも情報技術が使われる。
- 他の職場と同様に、文書作成、決裁、会計処理、など、日常業務の効率化に資するソフトウェアも使われる。
2.4 行政支援―アカウンタビリティの向上
- 図書館サービスの統計情報とアカウンタビリティの関係とは?
- 統計情報を公表することにより、行政のアカウンタビリティ(説明責任)の向上にも資することができる。
3. 図書館で使われる情報技術
3.1 大量の情報管理と大量の事務処理
- 「データベース技術」、「トランザクション処理技術」とは?
- データベース技術: 大量の情報(データ)をきちんと整理して管理し、簡単に取り出せるようにする技術。
- トランザクション処理技術: 大量の事務処理を正確かつ高速にこなす技術。
- トランザクション処理の特徴: データの整合性を保つために、複数のデータの書込みをひとまとまりの処理として実行する。もし途中で処理が失敗した場合は、処理の開始前の状態に正確に戻して整合性を保つ。
3.2 ネットワーク機能
- ネットワーク技術は、図書館では、どのようなサービスに必要になるか?
- ある図書館で借りた本を別の図書館で返却できるようにするには、ネットワーク経由で図書館が相互にデータベースを参照・更新する必要がある
- そのほか、館内でのインターネット利用、館外からの図書館サービス利用にも必要。
3.3 自動認識技術
- 自動認識技術を使って何ができるか?
- 資料にバーコードやICタグなどを貼付することによって個体としての本を正確・迅速に管理することができるようになり、貸出・返却や蔵書点検の効率化が可能となる。
3.4 コミュニケーション手段
- 「電子メール」、「ホームページ」、「ブログ」を使って何ができるか?
- 図書館のスタッフと利用者との間のコミュニケーションの道具として使われる。
- 電子メールによるお知らせや督促、ホームページによる幅広い情報提供、ブログによる対話など。
3.5 その他の技術
- 「ICタグ」、「ロボット技術」とは?
- ICタグ: ICチップに記録した情報を電波で読み取る電子荷札。
- ロボット技術: コンピュータを利用してさまざまな労働作業を自動化する技術。図書館の場合は、書庫の本の出し入れを自動化する装置など。
- 自動化書庫の例
- 出典: 日本ファイリング - 自動化書庫 オートライブ
- [参考リンク] YouTube - Bibliotheca Smartlibraries - Advanced Automation Library Solutions — The Shanghai Library East
4. 図書館における情報技術の活用例
4.1 図書館業務システム
- 図書館業務システムのパッケージソフトとは?
- 図書館ごとの個別システムではなく、最初から汎用として作成されて提供されるシステム。
- 導入した図書館では必要に応じてカスタマイズが可能なことが多い。
- 図書館の種類によって、「公共図書館用」「大学図書館用」「学校図書館用」などがある。
- 専門業者が販売している例
- 富士通 - FUJITSU 文教ソリューション WebiLis(ウェブアイリス)
- 日立 - ADWORLD 図書館情報総合システム [販売終了のため、リンク先には「「ADWORLD 図書館情報総合システム」は、2018年7月を以って販売を終了いたします。」の表示]
- NECソリューションイノベータ - 図書館システムソリューション「図書館システム LiCS-WebⅡ」「図書館クラウド GPRIME for SaaS/図書館」
- 三菱電機ITソリューションズ - 図書館システム MELIL
- リコー - 図書館情報管理システム LIMEDIO
4.2 商用データベース
- 図書館が商用データベースを提供する目的とは?
- 調査や研究を効率的に行うことができるようにする。
- 商用データベースの例: 文献情報、記事情報、官報、事典、法令、人物情報、企業情報、その他特定分野
- オンラインデータベースの例
- 出典: 東京都立図書館 - オンラインデータベース利用案内
- [参考リンク] 東京都立図書館 - 新聞雑誌記事横断検索データベース(有料)のご案内
- [参考リンク] YouTube - 東京都 Tokyo Metropolitan Government - オンラインデータベース(都立中央図書館バーチャルナビ5)
- [参考リンク] YouTube - 東京都 Tokyo Metropolitan Government - オンラインデータベース(都立多摩図書館バーチャルナビ13)
4.3 図書館のホームページ
- 図書館がホームページを作成する目的とは?
- 図書館からの情報発信、図書館サービスの提供、利用者とのコミュニケーション、などがある。
4.4 インターネット(接続サービス)―ハイブリッド型図書館の実現
- 紙媒体と電子情報のハイブリッド型図書館とは?
- 館内で、紙媒体の資料を提供するだけでなく、インターネット経由での電子情報も提供する。
- 館外からインターネット経由で電子書籍を利用する場合なども考えられる。
- 図書館がインターネット端末を提供する場合の注意点
- 利用者が使ったUSBフラッシュメモリなどで、ウイルスが持ち込まれる危険がある。
- 子どもが有害サイトにアクセスするのを防ぐため、フィルタリングなどの対応をする場合もある。
- 持ち込みパソコンによるインターネット利用への対応
- 有線のLANコンセントや、無線LANのアクセスポイントの提供など。
- この場合も、悪用を防ぐ対策が必要となる。
- なお、インターネットに直接接続できるスマートフォンやタブレットを持ち込んで使う場合は、図書館では特に対応は必要ない。
4.5 電子図書館サービス
- 電子図書館サービスのメリットとは?
- 加工性が高い。(サイズの拡大・縮小。ページあたりの文字数の変換。全文検索。など)
- 館外からネットワーク経由で利用可能。
- 電子図書館サービスの例
- 「デジタルアーカイブサービス」、「電子書籍サービス」、「電子ジャーナルサービス」など。
- [参考リンク] NHK 宮崎 NEWS WEB - 宮崎市が「子ども電子図書館」のサービス開始
- [参考リンク] 紀伊國屋書店 - 学術電子図書館 KinoDen
4.6 ゲート管理
- 盗難防止のための「ゲート管理システム」とは?
- 本の内部に磁気や電波で作動する検出装置を付けておき、正規の手続きをせずにゲートから持ち出すことができないようにする。
- 検出装置の例: 磁気を利用した「タトルテープ」、電波を利用した「ICタグ」など。
- ブックディテクションシステムの例
- 出典: スリーエム ジャパン - 3Mブックディテクションシステム
[現在はリンク切れ. 「業務停止のお知らせ」のページにリンク]
- 出典: 大日本商事 スリーエム ジャパンの図書館向けセキュリティシステム事業を承継
- [参考リンク] Bibliotheca - 資産を守る図書館セキュリティ検知
4.7 その他
- スタッフの事務作業の効率化に使われている情報技術とは?
- 一般的な文書作成や電子メールには通常のパソコンなどが使われる。
- 決裁処理や会計処理などには専用のソフトウェアが使われる。
- そのほか、施設の設備管理等へのコンピュータ技術の導入も進んでいる。
- BA (Building Automation) の導入(主に電気設備をコントロール)
- BEMS (Building and Energy Management System) ビル・エネルギー管理システム、など
- 図表出典: ライブラリー図書館情報学 3 図書館情報技術論 日高昇治著 第2版 学文社 2017