図書館サービス概論

> 図書館サービス概論 > 14 最近の動向から

1. 直接的なサービスから間接的なサービスへ
2. いわゆる読書通帳は問題か？
3. 本の消毒は必要か？
4. 「ユネスコ公共図書館宣言」の改訂

1. 直接的なサービスから間接的なサービスへ

従来の図書館サービスにおいては、図書館職員が利用者に直接応対してサービスを提供する場面が多かった。しかし最近は、自動貸出機やインターネット経由の予約などのように、利用者のセルフサービスで完了するものが増えている。

間接的なサービスの例としては、たとえば下記のようなものを挙げることができる。
- 館内のサービスで、セルフサービスによる利用も可能になったサービス
  - 自動貸出機による貸出、予約資料の受取、など
- 館外から、インターネット経由で利用することも可能になったサービス
  - 資料の予約、利用者個人の利用状況の確認、レファレンスの受付・回答、など
- インターネット経由のみで提供されるサービス
  - 電子書籍の貸出、デジタルアーカイブの利用、など

セルフ式を好ましいと感じる利用者が増えているといわれているので、図書館としても積極的に対応していく必要がある。

現在でも技術的には、利用スペースに職員がいない図書館も実現可能である。将来的にはそのような図書館が普通になっていくのかもしれない。

2. いわゆる読書通帳は問題か？

借りた本の記録を通帳のような形式で提供するサービス (商品名はいろいろある) が増えていて、利用者の評判もよい。

このサービスは、「自分がどんな本を借りたか？」を一覧したい、という利用者の要望に応えるものであり、その点では利用者に喜ばれていることも事実である。

しかし、利用記録が保存されることはプライバシーの点で問題があるのではないか、という意見もある。

また、利用者が、「通帳につけて自慢できる本は積極的に借りる」が、「通帳につけると恥ずかしいような本は借りなくなる」という可能性もある。その点でも問題があるかもしれない。

今後は、現在のサービスを改良していくか、あるいは、同様のサービスを通帳とは違う別の形で新たに提供する、などの方向で、検討が進められると思われる。

この問題について、下記の記事では客観的な立場から経緯や現状がまとめられており、参考になる。
- 国立国会図書館 - カレントアウェアネス・ポータル - CA1841 - 読書通帳の静かなブーム / 和知　剛
  - http://current.ndl.go.jp/ca1841 (accessed 2021-03-31)

日本図書館協会では、図書館の自由の観点から注意が必要な点をまとめており、参考になる。
- 日本図書館協会 - いわゆる「読書通帳」サービスについて：「図書館の自由」の観点から
  - http://www.jla.or.jp/committees/jiyu///tabid/735/Default.aspx (accessed 2021-03-31)

なお、「読書通帳」は、株式会社内田洋行およびライトキッズ株式会社の登録商標である。

いわゆる読書通帳の事例

LibReCo(リブレコ)
- 富士通システムズアプリケーション＆サポート - 読書記録を残そう!―LibReCo(リブレコ)―
  - https://cloud-app-support.fjas.fujitsu.com/optionservice/libreco.html (accessed 2021-03-31)
- 出典: LibReCo ご紹介パンフレット
- 参考リンク: 出典 (オリジナル) [1,228 KB]
  - https://cloud-app-support.fjas.fujitsu.com/optionservice/images/libreco_flyer_201806.pdf (accessed 2021-03-31)
読書通帳機
- 内田洋行 - IT図書館システム「ULiUS（ユリウス）」 - 読書通帳機
  - https://www.uchida.co.jp/ulius/service/readbook.html (accessed 2021-03-31)
スクールキッズ、ブックキッズ
- ライトキッズ株式会社「スクールキッズ」、「ブックキッズ」
  - http://www.lightkids.co.jp/ (accessed 2021-03-31)
図書通帳・読書手帳
- OEC情報処理センター - 「探調TOOL」シリーズ - 図書通帳・読書手帳（オプション）
  - https://solution.oec-o.co.jp/data/tancho_passbook/tancho_dtl/ (accessed 2021-03-31)

3. 本の消毒は必要か？

館内に本の消毒器 (商品名はいろいろある) を設置し、利用者が自分で自由に使うことができるようにしている図書館が増えていて、利用者の評判もよい。

しかし、本に紫外線を照射したりするので、表紙や本文用紙に悪影響があるのではないか、という意見もある。

また、図書館の資料には通常の形態の本以外にもさまざまな資料があるので、場合によってはかえって本を破損する危険性もある。

また、そもそも図書館の本をそこまで清潔にする必要はないし、本だけを清潔にしてもあまり意味がない、という意見もある。

しかし、一般の人の清潔志向が高まり「図書館の本は汚いから利用したくない」という人もいるので、今後も、何らかの方法で同様のサービスを提供することが必要とされていくものと思われる。

消毒器の事例

除菌BOX
- 出典: キハラ図書館用品総合カタログ Vol.90. p. 292.
- 参考リンク: 出典 (オリジナル) [704 KB]
  - https://www.kihara-lib.co.jp/wp-content/uploads/kihara-catalogue-search/292.pdf (accessed 2021-03-31)
デンネツ殺菌ブッククリーン COCOCHI（ここち）
- 株式会社デンネツ - デンネツ殺菌ブッククリーン COCOCHI（ここち）
  - https://www.dennetsu.com/cocochi.html (accessed 2021-03-31)
- 出典: デンネツ殺菌ブッククリーン COCOCHI - 製品カタログ
- 参考リンク: 出典 (オリジナル) [3,855 KB]
  - https://www.dennetsu.com/wp-content/themes/dennetsu/img/cocochi/download/catalog.pdf (accessed 2021-03-31)
LIVA図書除菌機（リヴァー）
- 図書館流通センター - 書籍除菌機 - LIVA図書除菌機（リヴァー）
  - https://www.trc.co.jp/solution/bookcleaner.html (accessed 2021-03-31)
- 株式会社エヴァーツリー・ジャパン - 図書除菌機
  - http://www.evertreejp.com/lbs.html (accessed 2021-03-31)
- 出典: 株式会社エヴァーツリー・ジャパン - LIVA図書消毒機 - カタログ
- 参考リンク: 出典 (オリジナル) [23,867 KB]
  - https://www.dropbox.com/s/upkn8xnsnp0l90o/%5Bjapan%5Dbooksterilizer_catalog.pdf?dl=1 (accessed 2021-03-31)

4. 「ユネスコ公共図書館宣言」の改訂

2022年に、国際図書館連盟 (IFLA) が改訂版を公開
国際図書館連盟 (IFLA) の Web ページ
- IFLA - The IFLA-UNESCO Public Library Manifesto 2022
  - https://www.ifla.org/public-library-manifesto/ (accessed 2023-07-07)
- リポジトリのダウンロードページ
  - https://repository.ifla.org/handle/123456789/2006 (accessed 2023-07-07)

カレントアウェアネス・ポータルの解説記事から

2022年7月27日、国際図書館連盟（IFLA）が、「IFLA/UNESCO公共図書館宣言」の改訂版を、世界図書館情報会議（WLIC）：第87回国際図書館連盟（IFLA）年次大会で公開したことを発表しました。
- 出典：国立国会図書館 - カレントアウェアネス・ポータル - 国際図書館連盟（IFLA）、「IFLA/UNESCO公共図書館宣言」の改訂版を公開
  - https://current.ndl.go.jp/car/46562 (accessed 2023-07-07)

2023年に、日本図書館協会が日本語訳を公開
日本図書館協会の Web ページ
- 日本図書館協会 - IFLA-UNESCO公共図書館宣言2022
  - https://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/1018/Default.aspx (accessed 2024-03-30)
- PDF版のダウンロードリンク
  - https://repository.ifla.org/bitstream/123456789/2766/1/IFLA_UNESCO%20Public%20Library%20Manifesto%202022-Japanese.pdf (accessed 2024-03-30)
- テキストデータ版のダウンロードリンク
  - https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/kokusai/IFLA-UNESCO%20Public%20Library%20Manifesto%202022-Japanese%20ver..txt (accessed 2024-03-30)

カレントアウェアネス・ポータルの解説記事から

2023年5月22日、日本図書館協会（JLA）が、「ユネスコ公共図書館宣言2022」を公表したことを発表しました。
- 出典：国立国会図書館 - カレントアウェアネス・ポータル - 日本図書館協会（JLA）、「ユネスコ公共図書館宣言2022」を公表
  - https://current.ndl.go.jp/car/182241 (accessed 2023-07-07)